小さな幸せを感じる日々の日記

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写実を超えるリアル『岸田劉生』

職場の方にチケットを頂いたので行ってきました。

 

『没後90年記念 岸田劉生展』東京ステーションギャラリー

没後90年記念 岸田劉生展 | 東京ステーションギャラリー | 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ

 

  • 開催期間:2019年8月31日(土)〜2019年10月20日(日)
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岸田劉生と言えば麗子像。

というかそれしか印象にない。

 

私は岸田劉生の麗子像に対して何の印象もないというか、それより多少怖さを感じていて所謂「好きなジャンル」では無かったので、開催されていたのは知っていたが行く気は全くなかった。

 

でもせっかくの招待券だし、職場から近いし、行かないのも申し訳ないなという義務感で行く事にしました。大正解でした。

 

技術の変遷が心地よい展示

年代順に展示してありますが、この人は時代によって描き方も技法も画材も違うため一概に「歳を重ねるごとに上手くなる」という感じではなかったんだなと感じました。

 

若い頃ゴッホセザンヌの技法を真似ていた時期が少しありましたが、その後しばらくはその技法をあまり感じませんでした(個人的感想)

そしてその「あまりゴッホセザンヌ感を感じない時代」の肖像画がとても大胆にして緻密、リアルでありながらより絵画らしいものへと順々に変化していく様がとても面白かったです。

 

リアリズムとは趣を異にするリアル描写

麗子像を描くようになる少し前の静物画が数点展示されていたのですが、その作品群は私にとってやや恐怖心を抱かせるものでした。

ただの果物と瓶がテーブルに乗っているだけのものなんだけど、なんていうか、凄く簡単に言うととてもリアル。

 

けれども、それは所謂リアリズム(写実主義)とは意味が違っていて、あくまでも絵画として描かれている。

うまく言葉が見つからないのだけど、理性が「これは絵だ」と理解していて、けれども感性というか感覚野というかそういう場所の感情が「それはあたかも本物のように振る舞っている」と受け取る。相反する理解が同時に脳内で反応してしまう事に少し混乱してしまい、個人的にはその感覚が恐ろしく思えたのです。

 

でもこの静物画こそ、(麗子像しか知らない)私がわざわざ岸田劉生展に行って良かったと思えた作品でした。これもある意味『感動』。

 

文化財『道路と土手と堀』『麗子像』

文化財となっている『道路と土手と塀(切通之写生)』の展示を見た時「ああ、この(教科書に載っていた)絵、岸田劉生だったんだ。ゴッホかと思ってた」という感想が頭に浮かび、劉生が若い頃学んでいたゴッホの影響がこのあたりには多少あるのかなと思いました。

 

ただの風景が作者の『自分事』になる瞬間

『道路と土手と堀』と同じような場所を描いたものが他にも何点かあるのですが、そこにかの麗子嬢が小さく描かれている作品が展示されていました。これは可愛かった…。

愛娘に対する劉生の愛情はとても強くて、今まで見ていた風景が麗子嬢が存在する事で全く違った印象になっているのだろうなと思える作品でした。

描かれてる麗子嬢2cmくらいだけどね( *´艸`)そこもまたカワイイ。

 

あとはかの有名な麗子像のオンパレード。愛情は判るが小さな子供が何時間も同じポーズをし続けるのって相当忍耐だと思う。(麗子嬢ご本人も「泣きそうになりながら」とか言ってたし)手加減してやれよおやじさん…と思いながら鑑賞しました。

 

そして実際の麗子嬢ってどんな顔だったんだろうって前から興味があったのですが、今回写真が展示してありました!

岸田劉生には申し訳ないがご本人様の方が可愛い!!!

なんか愛情が顔に丸みを与えた描写として現れている気がする…( *´艸`)

 

そして晩年

晩年は水彩画が多く残されていましたが、大陸に渡った後は少し油絵も描いていたのですね。そして38歳没。わ、若い若すぎる………。

 

 

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《絵以外の感想》

私は普段、自分の行きたい展示しか行きません。だって美術館とか展覧会とか博物館とか展示会っていつでもどこでも沢山やっていて、あちこち行くとそこそこお値段するじゃないですか。

そこで好きでもない作家の展示会行って出来に文句つけるくらいなら行かない方がずっと良いと思っているタイプなので。

絵画なんてそれこそ好みの問題が大きく関わってくるものだと思うので、好きでもないものに首を突っ込むつもりは毛頭ない。私は「好きな作品が好き」なのであって、「美術全般」が好きな訳ではない種類の人間です。

 

だから今回も全く行く予定には入っていなかった岸田劉生展なのですが、正直行って良かったと思いました。どちらかというと力強い筆致で描かれた、麗子像以外の作品が個人的には見られて良かったなと思ったので。こんな機会がなかったら知り得なかっただろうなと思いました。